バチカン・エクソシスト

バチカン・エクソシスト (文春文庫)

バチカン・エクソシスト (文春文庫)

イタリアのエクソシスト達のルポ。エクソシストは映画で有名になったように悪魔祓いの施術である。本書は、内紛や戦争などのルポライターが書いているため、エクソシスト達だけでなく、受術者達、カトリック教会の総本家であるバチカンの司祭、精神科医、警察署長など様々なスタンスの人たちの意見を求めて構成されているため、公平なスタンスから信仰や悪魔祓いの施術についてまとめられている。

ジャケ買いだったため、正直なところサスペンスかホラーだとおもっていた。タラタラと読み始めたのだけど、悪魔祓いの施術と共に、施術側・受術側の話を織り交ぜながら描写されているので、ドキュメンタリー映画のようであった。特に本書に登場する4人の受術者の中には医者もおり、受術者も科学的・非科学的の両方の視点から話をする。カトリックの総本山であるバチカンエクソシストを否定しているわけではないのだが、安易な対応を控える様に指導しているようである。要するに、科学的な判断から精神的な病気に分類されるのであれば医者の診療が必要であり、安易に悪魔憑きに分類すれば人に原因があったとしても、悪魔に責任が転嫁され原因を直視した抜本的な対応を行うことが出来ないと言う根拠からである。悪魔と言うと単語を用いていると書いていて不思議に感じるのだが、いわゆる悪い何かしらの概念を表しているものだと思われる。

さて、個人的な感想も残しておく。
僕はエクソシストを否定しない。恐らくその様な科学的に証明出来ない憑き物は現実的にあり得るだろう。非科学的かもしれないが、大きな意味では信仰という行為によって、人の障害を取り除けるのであれば、科学的に説明出来ないものであっても取り入れるべきだし、科学的であっても人や自然の障害となっているものは取り除いていかなければならない。本書で示されるイタリアでの取り組みのように、医師や警察組織と宗教組織が垣根を無くした組織・仕組みを作り上げることが大事なのだと感じた。
ちなみにではあるが、巻末の後書きからもちょっとした知識を得られる。

  • エクソシストの様なお祓いは日本で発生していないではないか…と言う意見もあるだろうと思うが、悪魔に憑かれる現象は、”(欧米の様に)善悪の二極で考える文化”であり”家族や友人と信仰を大事にする土壌”に発生しやすいようである。日本のように八百万の神々を信仰し、様々な意見を取り入れる混沌とした土壌では発生し難いらしい。
  • 映画エクソシストには本当の牧師(司祭)が2名出演しており、映画自体の演出もカトリック教会が支援しているらしい。

あらゆる現象や事象の2面性だけにとらわれ、否定だけをしていたら、本書の内容は全てフィクションに過ぎなくなってしまう。フィクションのようであっても、悪魔憑きに悩まされている者が居り助けを求めているのは現実に起きている。