ワイルド・ソウル
- 作者: 垣根涼介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/04
- メディア: 文庫
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- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/04
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主人公となるのは移民生活を生き抜いた1人と、同じ集落に移民した家族の子供2人、そして生き抜く過程で知り合った1人の計4人。復讐の対象は外務省と国。復讐は移民政策は、食糧難による棄民政策だったという話。
本書も主人公たちの背景が細かく描かれているので、登場人物たちに感情移入できる。そして、それを取り巻く人物たちが彼らの背景を際立たせており、登場人物たちの周りを彩っている。何が正義で何が悪なのかわからない物語で、登場人物たちが行う復讐劇は悪なのだけど、本当に悪いことが何なのか…。
本書の中で面白かった点は、移民2世の主人公であるケイが、東京の感想を語るところ。主人公の独りであるケイは言う。
「まあ、貧乏臭い。貧乏と言うわけじゃない。貧乏臭い」
「おれの国じゃあ、金のないやつはないなりだ。服装も住む家もそうだ。それで結構笑って暮らしてる。だが、この国の連中ときたら、どいつもこいつも飾り立て、少しでも自分を良く見せようと躍起になっている。それが、まあ貧乏臭い。」
僕も同感だ。何と言うか、個性の尊重を叫ぶ割には個性がない。化粧の仕方、ファッションの流行、その他諸々…、大半の人たちがメディアに踊らされているように見えて滑稽だと感じることさえ、たまにある。それと自己顕示欲の強さ…。僕もブログで好きなことを書いているので自己顕示欲が強い方ではあるのだが、誰もが自分を良く見せて好かれたいんだろうな…と感じてしまう*1。”貧乏臭い”と言うのは面白い表現だな…と思ったが、心が貧乏なのだと思うと納得できる。貧乏でも、仕事に追われてても、独りで孤立しても、やはり自己満足しているから毎日が楽しい。辛いことや、怒ること、不安さえもほとんどない。自分が納得して生活できていれば、明日は来なくて良いと思うことさえある*2。
それと、車の描写が細かい…。「君たちに明日はない」の中でもコペンをチョイスし、軽やかに走らせていたが、本書ではRX-7(FD3S)のフルチューンが登場する。ポート研磨にロールゲージ、そしてタービンの名前から首都高の走り方まで、かなりマニアックな描写である。著者も、いわゆる走る車が好きなんだろうなぁ…と勝手に親近感を抱いてしまった(笑。