Ron's Backlog

奔放不覊

クラウド化知的生産革命

先日、京都・大阪に出張した時に購入
NewsWeek日本版 10・28号

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2009年 10/28号 [雑誌]

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2009年 10/28号 [雑誌]

  
出張の前日が完徹だったため、今頃読んでいたのだが、うーん…と言う感じ
Google*1から"クラウドコンピューティング"というキーワードが出てきた
今じゃ何でもかんでもクラウド
マスメディアに踊らされてるな…
  

はじめに

そもそも、クラウドコンピューティングとは?ということに答えられる人は、どれだけ居るのだろうか。僕自身も正確に表現できる訳ではないし、あくまでもイメージでしか把握しておらず、それが正しいかどうかもわからない。
僕の中でのクラウドコンピューティングとはサービスの拡大化でしかなく、これによりビジネスチャンスが拡大したり、仕事の進め方が変わると言うのは予想できるが、本書に書かれるように「人間の生活がオンライフ化」するとは到底思えない。逆に言うと、これは先進国の理論であり、一時期問題となった情報格差が一段と進む可能性を秘めていて、差別に繋がる恐れもある。
インターネットにより生活が豊かになることを否定する訳ではないが、少なくとも日本での利用状況を見ると、とても明るい未来があるとは思えない。また、Google信仰も否定する気は無いが、本書で示すような「技術の進化による第4の革命」という内容に疑問を感じるのである。
そもそも第1のコペルニクス革命、第2のダーウィン革命、第3のフロイト革命は、人の考え方が前提にあるので、クラウドコンピューティングによる変化は革命というよりも、ビジネス手法の進化程度であるのではないだろうか。
  

ビジネス面における考察

ビジネスの面から見ると、イニシャルコストで儲けることができないから、サービス化し継続的に課金できる仕組みに変えただけだと考えている。
個人や中小企業には便利な世の中になったものである。部品を組み立ててサーバを動かし、ルータの設定をして、DDNSに登録し云々…
ホームサーバを動かすよりも、簡単で安全にサーバを持てるのだ。ハードを組み立てる時間、設定を行う時間などを考えると、オンラインで操作でき、様々なサービスを組み合わせることができることは、コスト縮減の効果が大きいし、知的生産により注力できることも大きい。逆にサービス提供側も、低価格化が進むイニシャルコストを得るよりも、安くても継続的に課金される仕組みの方が事業計画が立てやすく、半永久的に収入を得られるモデルに変化せざるをえなかったのではないかと思われる。
  

情報の価値からみる考察

次に情報の価値の面から見てみる。
GoogleMapやWikipediaにより、辞書や地図の金銭的価値は下落した。しかしながら、高度な地理情報の金銭的価値は下落していない。このため、より高度な情報のニーズが高まっていると考えられる。ここでは地理情報に留めるが、他の情報も概ね同じ傾向が見られると感じる。一般的な情報は無償化していき、より高度(精細)な情報は価値が高まっていくと予想される*2
  

一般的な風潮(特に日本)からみる考察

そして、一般がGoogleに抱く幻想から考えてみる。
GoogleMapやGmailなど、ビジネスモデルを変えたおかげでサービスの無償化が進んだ。特にGoogleDocsはMicrosoftが独占していたOfficeツールをWeb上で利用でき、PC側にソフトウェアを必要としない…と言うことで、OpenOfficeなどのオープンソースソフトウェアよりも着目されてしまった。実際のところ、使用感はOpenOfficeの方が上だし、細かな点まで見るとMicrosoftOfficeの方が優れていると感じる。一般的な利用者をベースにすれば、利用するソフトウェアを選択できるようになったのは素晴らしいことだ。
  

情報管理からみる考察

最後に情報管理の面から見てみる。
PC上でデータを管理する以上、セキュリティ設定を正しく行っておけば、ほぼ情報が漏れることはない。これをWeb上に移すことによるリスクは大きい。Googleの場合、情報管理方法は非公開となっており、アクセス状況や情報利用についても非公開である。
特にGmailやGoogleDocsはGoogleのアカウントを必要としているため、リスクが高い。特定アカウントによる検索結果等の情報操作が行われても一般利用者が気付くことはない。Googleは、「検索や保有する情報の全てをソフトウェアのアルゴリズムで自動的に行っており人的な意図は入らない」としているが、それを監査する機関は存在しない。公的機関であれば、必ず第三者的な監査機関を設けており、公平性、透明性を保つようにしているのだが、民間企業である以上、不正が働かない限り企業秘密が監査されることはないである。
  

まとめ

Googleを否定する気はない。Googleは素晴らしい企業であるし、企業理念に突き進んでいるのも憧れている。クラウドコンピューティングにおける利便性の向上、知的生産性の向上は、言葉の通りだと思う。
しかし、誇張表現が多すぎやしないか?という点に疑問を感じている。いわゆるマスメディアの内容に感化され易い日本では、このような誇張表現を減らすべきなのではないだろうか?そもそも、このような特集記事を読んで、正しいかどうかGoogleで検索する人は少ないだろうし、多面的に情報を分析するにはクラウドコンピューティングという概念は大きすぎる*3
僕が言いたいことは、インターネットのマスメディア化を防ぎたいと言うこと。Yahoo!に載ってるから正しい?、Googleで検索された情報が正しい?何が正しくて何が必要な情報かを、自らが判断し選択していくこと、即ち情報倫理という範疇の教育が必要なのではないだろうか。
多くのメディア業界を否定する気はないが、メディアとして大衆に表現していく以上、表現のモラルには気をつけて欲しいものだ…*4

*1:世の中Googleを絶賛し過ぎじゃないか? 僕は検索エンジン自体もGoogleだけでなくBaiduやBing、AltaVistaやGooなど複数の検索サイトにキーワードを飛ばすようにしている…。

*2:そもそも、Googleが無償で公開している情報は、元来から無償で見れるものばかりであり、インターネット上のサービスとしてしか価値が見出せないと思うのは僕だけだろうか…?

*3:検索しても様々な企業の広告にしか出てこない。もっと学術的な概念や公平な情報が出てきてほしいものだ…。

*4:こんな記事が出るから、上層部がクラウドにすれば何でも経費が安くなると思っちゃうんだ…。経費を抑えることはできるけど、企業における情報管理は、トータルで考えていかないと後々複雑化して余計に経費が必要となる可能性が高いということに気付いてほしい。要は、このエントリは僕の愚痴だったりもする…。